便秘と下痢の診断と治療

便秘について

便秘は単に排便の回数や排便量によるのではなく、残便感や便が出にくいといった症状があれば便秘と考えられます。つまりすっきりと排便できない状態であれば便秘とされます。排便習慣は個人差が大きく、毎日排便があっても、硬い便や排便困難を感じる場合があり、排便が2~3日に1回で硬い便でも全く苦痛を感じないこともあります。

原因

  • 食生活
  • 運動
  • ストレス(睡眠・生活リズム・精神ストレス)

 便秘は、腸や骨盤底の異常で起こることもあります。また、腸疾患や全身疾患の症状として現れていることもあれば、薬の副作用によって生じるケースもあります。

大腸がんやポリープで便の通過が妨げられて便秘を起こすことや、ホルモンなどの分泌系・神経系の疾患で便秘を生じることもあります。複合的な理由が重なって頑固な便秘になっている可能性もあります。

便秘はよくある症状ですが、原因疾患がある場合、早急に適切な治療が必要なことも多いのです。便秘の症状が続くようでしたら、専門医を受診して原因を確かめ、適切な治療で解消しましょう。

便秘が起こす問題 

  • おならが臭い・口臭
  • 肌荒れ
  • 肥満
  • 不眠

当院では便秘の原因を同定し、その病態にあった投薬を行うだけでなく、食事指導や便秘運動生活指導などトータルのサポートを行います。

いわゆる便秘(機能性便秘)にもタイプがあり、治療法もそれぞれ異なるものですのでご相談ください。

便秘の治療

食事療法、運動療法

繊維質の多い野菜やフルーツ、そして水分をたっぷりとってください。栄養バランスがとれたメニューを心がけて、食べ過ぎないように注意し、3食をできるだけ決まった時間にとってください。朝食は特に欠かさずとってください。なお、適切な量の脂質は、腸を刺激して正常な働きを促すためにも不可欠です。 散歩程度の軽い運動を習慣付けるのも重要です。運動により血行が改善すると胃腸の働きも活発になりますし、蠕動運動も正常に戻っていきます。無理のない範囲で長く続けていけるようにしてください。就寝前のストレッチや腹部の軽いマッサージも有効です。

生活習慣改善

生活習慣改善

食事療法、運動療法をした上で、毎日できるだけ同じ時間の就寝・起床を心がけます。三度の食事を毎日、同じような時間にとるようにします。 正しい排便習慣を身に付けることも重要です。便意を感じたら必ずすぐにトイレに行くようにしてください。睡眠時間の確保、ストレス解消なども心がけます。リラックスできる空間を作り、できれば毎日バスタブに浸かる入浴をして身体を芯まで温めましょう。

薬物療法

生活習慣の改善だけで便秘の解消が難しいケースでは、薬物療法を行っていきます。機能を正常に導く薬、便の水分量を適切にする薬、腹痛を緩和させる薬、下剤、漢方薬、腸内細菌叢を整えるものなどから症状やライフスタイルに合わせて処方していきます。効果の現れ方には個人差が大きいため、再診時には効果についてしっかりうかがった上で処方をより適したものに変更していきます。市販薬の常用などで悪化させているケースが多いので、慢性的な便秘がある場合には専門医を受診して適切な治療を受けるようおすすめしています。

下痢

下痢

液状など水分量が多い便が何度も排出される状態で、短期間に解消する急性下痢と、1ヶ月以上続く慢性下痢に分けられます。水分量が90%のものを下痢と呼び、理想的なバナナ状の便は水分量が約70~80%、軟便は約80~90%とされています。食べ過ぎや飲み過ぎなどで日常的にも起こりやすい症状ですが、深刻な病気が隠れていて早急な受診が必要なケースもありますのでご注意ください。

早急な受診が必要な下痢

  • 急に激しい下痢が起きた
  • 便に血が混じる
  • 吐き気・嘔吐、発熱をともなう
  • 排便しても腹痛が治まらない
  • 脱水症状を起こしている

市販薬を服用すると悪化させる可能性もあります、上記のような症状があったらできるだけ早く受診してください。

下痢の原因

急性下痢

ウイルスや細菌などの感染による胃腸炎、お酒の飲み過ぎ、消化不良が主な原因です。感染によるものの場合、集団感染の原因になる可能性がありますし、下痢止めを服用することで状態が悪化することもよくありますので、特に早めの受診が必要です。

慢性下痢

クローン病や潰瘍性大腸炎など難病指定された炎症性腸疾患が近年増えています、また、器質的な問題がない場合には過敏性腸症候群も疑われます。病気以外の原因としては、抗生物質の副作用、ストレスなどがあります。また、大腸がんなどで下痢が続く場合や、便秘と下痢を繰り返すこともあります。慢性的な下痢があったら、必ず受診して適切な治療を受けるようにしましょう。

下痢の主な原因疾患

ウイルス性胃腸炎

ロタウイルス、アデノウイルス、ノロウイルスをはじめ、さまざまなウイルスによって下痢を生じることがあります。吐き気・嘔吐、発熱、腹痛などの症状を同時に起こすことも多いため、こうした症状に気付いたら早めに受診しましょう。

過敏性腸症候群

蠕動運動などの機能的な異常によって急激な腹痛と下痢、便秘と下痢を繰り返すなどの症状を起こします。腸をコントロールしている自律神経はストレスの影響を受けやすいため、緊張などをきっかけに下痢を起こすことがよくあります。

潰瘍性大腸炎

はっきりした原因がわからず根治に導く治療法がないため難病指定されていますが、適切な治療によって炎症を鎮め、寛解期を長く続けるコントロールがうまくいけば、発症前と近い生活を送ることもできます。下痢や腹痛が慢性的に続いて血便や粘血便を起こすことがあります。活動期と寛解期を繰り返すなど症状はクローン病と似ていますが、潰瘍性大腸炎は大腸だけにびらんや潰瘍を起こす病気です。

クローン病

はっきりした原因がわからず根治に導く治療法がないため難病指定されており、症状は潰瘍性大腸炎と似ていますが、クローン病は口から肛門までの消化管のさまざまな場所に炎症や潰瘍を生じる病気です。クローン病では消化と吸収がうまくいかなくなるケースが多く、栄養療法や食事制限なども必要になります。

大腸がん

大きな大腸がんは便の通過を妨げ、硬い便が通過する場所にある場合には擦れて出血を起こすことがあります。また、下痢や便秘になる、便秘と下痢を繰り返すこともあります。症状を起こす前の早期に発見するには、定期的な大腸カメラ検査が必要です。

下痢の治療方法

下痢の治療方法

急性下痢の場合、脱水を防ぐための十分な水分補給が必要です。水分補給が不足する場合には点滴などが必要です。細菌感染によって起こっている場合は抗生物質を使うこともありますが、ほとんどの急性下痢は整腸剤を用いた治療を行うことが多くなっています。 慢性下痢の場合、必要な検査を行って原因を突き止め、適切な治療を行います。特に大腸カメラ検査は各疾患に特徴的な病変の有無や粘膜の状態を確認できますし、疑わしい部分の組織を採取して確定診断が可能です。また、慢性下痢の治療では、生活習慣の改善なども有効な場合がありますので、必要な際には具体的なアドバイスも行っています。

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